福元丸 船長福本 好孝 さん
福元丸(19トン、乗組員6名) 船長
1962年生まれ、香住生まれの香住育ち。
代々漁師の家庭で育ち家業を継ぐために漁師になったのは18歳の時。
現在、奥さんと息子2人娘1人の5人暮らしで、沖では厳しいが家庭では優しい父親です。
水揚げに対するプレッシャー
18歳から船に乗り父親より漁の知識を色々と教わり様々な経験を積み、34歳(1996年)の時に父親に代わって福元丸の舵を持つ事(船長)になったが37歳の時父親が他界、漁協理事でもあり、ベニガニ協会の会長でもあった父は根っからの漁師で、僚船内でもトップクラスの水揚げをしていた、しかし父親が亡くなってからは漁場取りの厳しさ、難しさを痛感させられ数年間水揚げはダウン、船員からの船長としての信頼を喪失させているのではないかと思い苦しい時期が続いた。そして改めて船長の漁や船員への責任のあり方を考えさせられたそうです。漁が出来るか出来ないかは船長の腕次第「このままではいけない」人一倍の負けん気と、父親から受け継いだ漁師気質で、漁場の海底状況を再確認したり漁具の調整にも工夫を入れ様々な研究を行い、漁師としてのキャリアは今年で36年、僚船のなかでもトップクラスの水揚げをする様になった。そんな福本さんだが趣味や特技、休日の過ごし方について尋ねると、プライベートなことは全て内緒というシャイな一面を持つ船長さんだ。
狙うのは香住ガニ
福本さんが行う漁は、香住ガニ(ベニズワイガニ)だ。専用のかごを使って漁を行う。松葉がにと異なり、香住ガニは水深が深い(800~1500㍍)ところに生息しているので海底地形、季節によって変わる海底潮流やカニの分布等、高度な技術が求められる。長年の実績経験と勘、そして運を持ち合わせている福本さんだからこそ出来る漁法だ。漁を行う際に、一番気を付けている事は海上気象状況だ。19トンの小型船で沖合漁場(離岸110キロメートル)での操業には安易な海況情報で出漁すると遭難事故に繋がる事もある。特に11月から2月にかけての海は大荒れとなる事が多く、状況判断が難しく一番神経を使う時期だという。香住ガニと松葉がにの最大の違いはやはり味。「香住ガニの方がしっかりとして甘味が強くそして値段も安い。カニと言えば松葉がにだなと思う人も多いけど、香住ガニも是非一度味わって、両方の良さを知って欲しいな。」と福本さんは語る。
鮮度への飽くなきこだわり
関西で紅ズワイガニが水揚げされるのは香住港だけだが、全国規模で見ると鳥取や富山でも水揚げされている。特に鳥取の境港は水揚げ量が日本一だ。このことから、どうしても量的には他の地域に劣ってしまう。「それなら香住は鮮度で勝負や!」と福本さんは意気込む。出漁から帰港までが20時間以内という短期操業の強みを生かして、今年から船内に冷水機を導入し、水温を4~5℃に保ち、活ガニの保存環境を改善。本当に新鮮な活ガニを持って帰れるようになったそうだ。また、ブランド価値を高めるためにタグを付けることも行っている。とにかく、良いカニを良い状態で浜に持って帰ってくることに飽くなきこだわりを見せている。
漁師・仲買人・加工業・漁業に関係する人たちと協力していきたい
残念ながら、現在の日本の漁業は下降の一途をたどっている。大半の魚介類の国内消費は年々減少し、併せて漁師の次の担い手も不足しているのが現状だ。香住もご多分に漏れず、その波が押し寄せている。こういった状況に福本さんは漁業に関係する全ての人が互いに協力していく必要があると主張する。現状を直ちに打開することは出来ないが、少しでも改善していくことができればと希望を述べる。