WEBマガジン 漁師に会いたい Vol.12 美嶋丸 船長 嶋崎 冨二男さん

Vol. 122019.03.31 UP

美嶋丸 船長嶋崎 冨二男さん

県立香住高校卒業後、底曳船の漁師となる。その後、会社員を経て、現職。但馬では珍しい養殖漁業に取り組まれている嶋崎さんにお話を伺います。

Vol.12 美嶋丸 船長 嶋崎 冨二男さん

「獲る漁師」ではなく、「育てる漁師」

嶋崎さんは養殖漁業(陸上養殖)をされています。養殖しているのは、アワビ(エゾアワビ)です。アワビと言えば、海の高級食材として有名ですね。お刺身に酒蒸し、ステーキと色々な食べ方で楽しめます。そんなアワビを日々、丹精込めて「育てている漁師」が嶋崎さんです。品質が良く、美味しいアワビを育てるために、なんと、餌となるコンブをまず養殖されています。そして、それをアワビに与えています。養殖されるアワビの中には人工飼料で育つものもありますが、嶋崎さんはそうではなく、コンブを餌にしてアワビを育てています。

「確かに、人工飼料をあげた方が成長は早く、量も取れます。でも、ミネラルを豊富に含んだコンブで育ったアワビの方がやっぱり美味しいです」と話します。また、餌になるコンブだけでなく、水温や水質に関しても徹底的に管理しています。「餌の他にもこだわっているところはたくさんあります。アワビに対しての愛情の量が違いますから、美味しさは折り紙つきです」と自信満々。まるで我が子を育てるような、優しい嶋崎さんの姿がそこにはありました。

 

◇今までに無い養殖アワビをお届けしたい。

 

このように、アワビを育てることに日々探求されている嶋崎さん。しかし、ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。水温や水質に特に敏感なアワビ。始めは管理がままならず、多くのアワビが駄目になってしまったそうです。また、停電によって海水の循環がうまくいかず、せっかく大きくなったアワビが出荷できないことも。「色々な失敗を繰り返しました。悔しい思いもたくさんしましたが、それよりも次はもっと良いアワビを育てようという思いの方が強かったです」と回想されます。

嶋崎さんの育てるアワビの大きな特徴の一つに砂が少ないことが挙げられます。天然のアワビと比べても砂が少なく、内臓や肝まで美味しく食べられます。このように付加価値をつけた嶋崎さんのアワビ、その甲斐もあってか、早くも脚光を浴びています。香美町商工会が行う「香美町の名品」に乾燥アワビ・茹でアワビが認定されました。これは香美町の特産物を生かした加工食品に対して認定を与えるもので、今回が第一弾でした。これからも、今までに無い養殖アワビを目指し、研鑽を積んで行きたいと語られます。

 

◇もっと多くの人が漁業に興味をもって欲しい。

 

嶋崎さん自身も県立香住高校漁業科のご出身。海や魚が好きなのは言うまでもありません。しかし、最近では、母校の生徒だけでなく、香住に住む子どもたちも海や魚と触れ合う時間がだんだん短くなってきているのではと話されます。少しでも漁業に関心を持ってもらいたいという思いから、「香住のわかめ、干物 漁業体験(2019/2/24、3/3開催・日本海マリンツーリズム推進事業)にもスタッフとして参加。試食には、嶋崎さんのアワビも登場し、参加者を喜ばせていました。また、嶋崎さんはワカメも養殖されており、これも試食として出されました。メニューは「生ワカメのしゃぶしゃぶ」。湯に通すと、サッと鮮やかな緑色に変わるワカメに参加者は驚きを隠せませんでした。嶋崎が養殖した、新鮮でミネラル豊富なワカメのファンが増えたことでしょう。

 

 

◇次なる目標は「かすみ海上GEO TAXI」

 

香住には、かつて遊覧船があり、町の中でも有数の観光スポットでした。しかし、観光客の減少や維持費用の問題から隻数は減り、ついには、「遊覧船かすみ丸」の廃業により香住から遊覧船が消えました。貴重な観光資源を失い、町は少し寂しい雰囲気に。そんな中、立ち上がった方のお一人が嶋崎さんでした。「何とかして、香住の美しい海や、自然が作り出す独特の地形を見て欲しかった」そこで、考え付いたのが「かすみ海上GEO TAXI」でした。香住の絶景スポットを小型船で巡る「かすみ海上GEO TAXI」。遊覧船のような大きな船では近づくことが難しい洞門や島に行ける点が大きな特徴です。「香住の海の美しさ、素晴らしさを知ってほしい。そこから、漁業や水産業に関心を持ってくれる人が出てきてくれると思います」と嶋崎さんの目は輝いています。

コースは30分・60分・90分の3つ。見どころは本当にたくさんあります。中でも、黒島(五色洞門)は必見です。天井の岩の隙間から陽の光が差し込むと、海の色が五色に変化し、神秘的な空間を創り上げます。乗船された方はその美しさ・自然の雄大さに魅せられることでしょう。2019年5月にOPEN。詳しくは「mishimamaru.com」または、問合せ先(090-6236-1226・嶋崎冨二男)にてご確認ください。これからも様々なチャレンジを続ける嶋崎さんから目を離せません。